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2019.07.25

「“たべもの記念日”という文化を作りたい」 “たべもの記念日研究家”吉原潤一さんが目指すもの

吉原潤一

たべもの記念日研究家。(社)日本フードアナリスト協会認定2級

高橋昂希

ライタ―で食べていきたい学生

“たべもの記念日研究家”吉原さんとの出会いは、行きつけのバーでのイベントのこと。

「“たべもの記念日研究家”をやってます、吉原です。お願いします!」

挨拶と共に差し出されたのは名刺とカレンダー。名刺には確かに“たべもの記念日研究家”と書かれている。カレンダーにはびっしりと“〇〇の日”の文字。

「よろしく……お願いします」と答えながらも、頭は疑問で埋め尽くされていく。

(“たべもの記念日研究家”ってなに? 食べ物の記念日って研究するものだっけ? カレンダーに書かれてることと関係あるのかな? てか、カレンダーの書き込みすごいな!)

と色々なところが気になってしまい、その日のうちに約束をして、後日詳しくお話を聞くことにしました。聞けば聞くほどストイックな吉原さんの“たべもの記念日”に対する姿勢、ぜひご覧ください! 

吉原潤一(よしはら・じゅんいち)さん
たべもの記念日研究家。埼玉県出身で2014年法政大学経営学部卒業。(社)日本フードアナリスト協会認定フードアナリスト2級。

大手スーパーマーケット会社に就職し飲食店プロデュース会社、飲食運営会社の広報業務を経て、2019年4月よりフリーランスとして活動。1年366日にある食べ物の記念日を「たべもの記念日」とし、人と食が心豊かにつながるきっかけづくりの活動を広げている。たべもの記念日を取り上げたイベントの開催、取材記事執筆、たべもの記念日カレンダーの制作などを通して、たべもの記念日にまつわる制定メーカーや飲食店、生産者の応援する事業を行なっている。

たべものを普段にない気持ちとやり方で食べてもらいたい

──“たべもの記念日研究家”ってどのようなお仕事なのでしょう?

主に3つあるんですけど、1つはイベント活動。メーカーさんと活動するときもあるし、自分で商品を買ってきてやることもあります。
例えば2年前。8月8日に“ベーグルの日”っていう日があるんですけど8種類のベーグルを買ってきて、食べ比べるっていう会を開きました。イベントの前の週に誕生日の方がいたので、ベーグルでお祝いもしましたね(笑)
他にも5月15日“マイコファジストの日”っていう菌食の記念日の日に、キノコしゃぶしゃぶのお店を半貸し切りにして、お店の人に頼んで通常よりも多い種類のキノコを食べる会なども開催しました。

協賛がなくても僕が主催して、ベーグルの日や菌食の日にそれぞれをとことん楽しむ日にするっていうイベントを開くのが一つですね。食べ物の記念日をピックアップして、普段にない気持ちとやり方で食べていただけたらなって思っています。一番最初は2月28日“ビスケットの日”から始まって、今では30回ほど続いています。

2つ目は執筆活動です。“たべもの記念日研究家”のHPにブログを書いたりしていて、これからプレスリリースなどもやっていけたらな、と思っています。

3つ目はお渡ししたカレンダー制作ですね。最初は僕自身の暗記用の、言ってしまえば趣味としてノートに作っていたんです。最近では「吉原はカレンダーだろ」って言ってもらえるような存在に化けていますけどね(笑)

一番初期の“たべもの記念日”カレンダー吉原さんのノートに直接、手書きされている

──カレンダー、かなり書き込みをされていて情報量が多いように感じるのですが……。

もともと僕がガリ勉なので学びたいことはとことん調べる人間なんですよね。マニアックなこと調べ尽くすのが好きなので(笑)

2∼3年前くらいは、Googleで“5月 食べ物 記念日”って繰り返し、繰り返し、2ページ分くらい見て漏れがないかを調べていました。強制される暗記は嫌いなんですけど、記念日のストーリーまで調べていくとすごく楽しいんですよ。最近はやっとアウトプットに力を割けるようになってきて、溜めたデータを放出している感じです。

“たべもの記念日研究家”になるまでの道のり

──“たべもの記念日研究家”という今のスタイルは、社会人になった当初から頭にあったことなんでしょうか?

僕、もともと独立というかフリーでやっていきたいという想いを持っていて、新卒で入った会社に40年間働き続けよう、という気持ちはなかったんですよ。食べ物で頭1つ抜けてやろう、と考えていました。

――“食べ物でなにかする”ということに、こだわりがあったんですね。

人の心を動かすようなものを作りたくて、ヒット商品を生み出したいという考えがあったんです。僕が大学生だった頃は、“金の食パン”や“プレミアムロールケーキ”などが出始めた時期で、世の中に響くヒット商品のイメージが食べ物だったんですよね。

最初は勤めていたのがスーパーマーケットということもあって、スーパーの専門家になりたいと考えていました。どの分野にもちょくちょく詳しくて商品開発もする人。でも当時取得したフードアナリストのコミュニティで、様々な分野に詳しい人を間近で見ているうちに専門性が欲しい、と思うようになりました。「~といったら吉原潤一だろ!!」みたいな。

──“たべもの記念日”を本格的に始められたキッカケは何なのでしょう?

勤めていたスーパーで店内放送を担当した日があって、7月2日“うどんの日”の放送をしたことがあったんです。そしたら主婦の方がこぞって買ってくれて。記念日っていいなって思ったんです。

もともと僕は友達の誕生日を祝うこと暦が好きだったので、何かの記念日を祝うっていう点では感覚を似ていましたし、これでいこうって思いました。当時は“暦のフードアナリスト”って言っていたんですけどね。

“たべもの記念日研究家”としてテレビに出演した経験も  

── 2019年の4月よりフリーランスとして活動をされていますが、フリーでの活動について不安はなかったのですか?

不安はありました。でもちょうどタイミングが合っていたんですよね。前の会社をやり切ったと感じた時期と、“たべもの記念日研究家”の活動が大きくなっていた時期、この二つが重なっていたんです。

キャリア的な話になるんですけど、社会人は自分で区切りをつけていくしかないと思っているんです。学生とちがって判断力や決断力が一人一人の中で大切になっていくと考えていて。前の会社は、2年間120%学ばせてもらいましたし、経験を積ませていただいてよかったと思っていますが、ここで決断しなければと思い辞めさせてもらいました。

──イベントなどでたくさんの人と交流されていると思うのですが、“たべもの記念日研究家”していてよかったな、と思った瞬間はどんな瞬間なのでしょう?

提供 吉原潤一さん

イベントの後に「いろんな種類のたべもの記念日が知れてよかった」という声や「楽しかった」という感想をいただくと嬉しいなと思います。あとは「カレンダーが欲しい」とか「このカレンダーおもしろいね」、「もらったカレンダー使ってます」って言われることもすごく嬉しいです。“たべもの記念日”が自分のいないところで広まっていて、日常に溶け込んでいっている気がするので。

最近では、一人ではクオリティの向上が止まってしまうところを「カレンダーを一緒に作りたい」と言ってくれる人が現れてくれて、「毎月欲しい」、「ストックが欲しい」と言ってもらたり、僕の知らないところで配ってくれたりして、縁が繋がるようになったことも嬉しく感じることですね。

これまでのカレンダー。提供 吉原潤一さん

──なるほど、人の温かさや繋がりを実感したわけですね。

最初のころに持っていたヒット商品を作りたいという気持ちは、去年の夏あたりから変化していて。今ではみんなが繋げてくれる“たべもの記念日”の心を広めていきたいなと思うようになりました。

なのでこだわるところはしっかりこだわろう、と思っています。

例えばカレンダーは時間の効率性を度外視して、納得がいくまで調べています。由来を調べる・食べる・発信する、がセットなので3年間やっても飽きないし、おもしろさがあるんです。

あと、バズるなど一瞬のブームで終わってしまうような仕掛けはやらないと決めています。広まるべき人に広まって、“たべもの記念日”が一種の文化になってほしいと考えているので。“たべもの記念日研究家”っていう字面も、漢字ばっかりにならないように気をつけてこの形になりました。

ブームではなく文化を作る これからしていきたいこと 

──吉原さんは今後“たべもの記念日研究家”としてどんな存在になっていきたいですか?

僕、憧れている存在があって。アンパンマンになりたいんです。

──あんぱんまん。あのアンパンマンですか?

そうです。アンパンマンって、他の仲間みたいに特別な特徴があるわけではないんですよ。強いて言うなら力がめちゃくちゃ強いくらい。でも毎回毎回、違う仲間が声をかけてくれて、楽しい時間を過ごして帰っていく。アンパンマンはみんなの拠点なんですよね。

僕も彼みたいな存在になりたいって思っているんです。“たべもの記念日”にとっての拠点みたいな。“たべもの記念日”に関連する仲間、例えば手打ちうどんパフォーマンスをされているうどん職人の小野さんや、ご当地レトルトカレーマニアの猪俣さん、サラダチキンを作ってらっしゃるアマタケさん、それぞれの記念日に彼らと何かやっていくことができたら、幸せな食で世の中があふれていくと思うんですよね。

そのためにも今は仲間を増やしていけたら、って思っています。コラボしてくれる人も、応援してくれる人も、手伝ってくれる人も。

提供 吉原潤一さん

あとは、やりたいことリストっていうのがあって、それもしていきたいですね。これらは全部僕の活動に共感してくれている人たちが「やったら?」って言ってくれたものなんです。みんなが「ほしい」っていう声と心を借りて浮かんできたコンテンツなので、実現してきたいと思っています。そうして活動していくことで、“たべもの記念日”という、ブームではない文化を作っていくことができると思うんですよね。

おわりに

「みんなが『ほしい」っていう声と心を借りた」という言葉に、今回インタビューで感じた吉原さんの人柄が凝縮されているように感じました。誕生日を祝うことが好きという点や、縁の繋がりを感じる、心を感じ取れる吉原さんだからこそ、“たべもの記念日研究家”が成立しているのだと思います。

日々の生活では、生産者さんやメーカーさんの想いを知るため、記念日の食べ物はできるだけ食べるようにしており、ときには産地まで足を運ぶそうです。

ほぼ毎日が何かの“たべもの記念日“。吉原さんのように暗記とはいかなくとも、日々の献立や誰かを誘う口実から、記念日のストーリーを調べてみてはいかがでしょうか?きっと誰かの想いが詰まったストーリーに出会えるはずです。

たべもの記念日研究家 吉原潤一さん HP
http://foodanniversary.com/

(取材・文・写真 高橋昂希)

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