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2019.05.30

「パン屋さんっていいな」と感じてもらいたくて。フードロスの削減に挑むパンの通販サイト「rebake」

斎藤優也

「クアッガ」社長。ロスパンのECサイト運営、マルシェ等への出店

中村玲菜

フリースクール代表とライターのパラレルワーカー

入店すれば、いつもほかほかの焼きたてパンが所狭しと並べられ、「新しいパンが焼きあがりました」と張りのある声が聞こえる。

地域に根差し、わたしたちの日常に溶け込んでいる、パン屋さん。

きっと誰しも、あのあたたかい空間で、どのパンにしようか、その食感や味わいを想像しながらトレーを手に取った瞬間はあるはずだ。

そんなパン屋が、いま、苦境に立たされている。

皆さんは、「フードロス」をご存知だろうか。

フードロスとは、売れ残りや食べ残しなど、本来は人が食べられるはずの食料が廃棄されることを言い、日本では、毎年約640万トンのフードロスが発生しているという報告がある。

パン屋でも、閉店まで売れ残ってしまったパンは捨てざるを得ず、そのロスの多さから苦労しているのだ。

今回は、パン屋と共に”ロスパン”の削減に挑む「斎藤優也」さんにお話を伺った。
※ロスパン:閉店後まで売れ残ってしまい、まだ食べられるのにどうしても捨てざるを得ないパン

生き物や自然に興味があった子ども時代

――斎藤さんがフードロスに取り組むようになったのは、どんな経緯があったのでしょうか?

お米とジャガイモの農業が盛んな地域で育ったこともあって、もともと自然に対する関心は強い子どもでした。

特に環境問題には人一倍興味をもっていて、子どもながらにいろいろなことを考えていましたね。

しばらく前にも田舎へ帰ったんですが、あらためて「この環境の影響を受けているんだな」と再確認しました(笑)。

――子どもの頃から環境問題に興味を持たれていたんですね。

社会の在り方についても疑問を持っていて、研究者になれば何かアプローチできるのではないかと思い大学に進学しました。

でも大学で学んだのは、「今の日本は資本主義だから、経済との兼ね合いが大切」ということだったんです。

それで、これは研究とかではないなと。

経済と関わりのある部分で、環境問題に対して取り組む方法を考え始めました。

――学生の頃から、フードロスに関心を持っていたと伺いました。

経済と関わりがあるのが、農業と廃棄物だったんです。

だから大学院では有機農業の研究をして、農業関係の会社に見学に行かせてもらうこともありました。

いろいろと考えた結果、廃棄物で何かできないかと思い、一番可能性を持っていたのがパンだったんです。

――一番可能性を持っている、というのは?

僕たち人間の身近にあって、かつ日々消費していて、捨てられているもの。
そして感情的に、「捨てるのはもったいないな」と思えるものを考えた時に出てきたのが、パンなんです。

パンって、あしが長いんですよ。

お弁当は二日と置いておけないけど、パンなら作ってから一週間くらいもつものもある。

フードロスの観点から言うといろいろあるけど、できるだけ僕たちの生活に近いことがやりたくて、「rebake」を始めようと決めました。

「パン屋さんは、みんな優しい」

――全国の30店舗のパン屋と協働されたということですが、どうやって繋がりを作ったのでしょう。

僕はそんなに人脈が広いわけでもなかったので、電話したりメールしたりして、地道に連絡していきました。

あとは、サイトを開く際に200店のパン屋さんにフードロスについての意見をいただいたので、そこで繋がったお店もあります。

――地道な営業活動の賜物なんですね。最初はどんな反応でした?

最初は、「パンの通信販売をしませんか」というところから話をするんですけど、そもそも通販をやっているパン屋さんって、全体の5%くらいで。

事前の聞き取りで、「パンのロスをなくしたい」という話をすると、90%以上のパン屋さんが「そうだよね」と共感してくれます。

今でも連絡すると歓迎してくれますよ。

たぶん、一般的には電話営業とかってあんまり歓迎されないイメージだと思うんですけど、「rebake」の場合は、10店舗のパン屋さんに行ったら、10店舗が「いいね」と好意的に反応してくれます。

――営業のやる気も高まりますね。サイトをオープンしてから、苦労されたことはありますか?

特に苦労をしたことはないです。

これからリスクはあるだろうけど、今はそんなにリスクを取っているわけではなく、イベントが起きるような状態でもないので、ほぼ無風です(笑)

何か起こったらいいな、風がついたらいいな、と思っています。


(「rebake」で販売されているパンは、どれも美味しそうなものばかり=斎藤優也さんご提供)

自身で移動販売も。「販売」と「製造」のフードロスをなくしたい

――高円寺駅周辺で移動販売もされているということですが、どういった経緯で始められたんですか?

パン屋さんに限らず、「作って、運んで、売る」の流れがあると思うんですけど、多くのパン屋さんは、作るのは得意だけど、運んだり売ったりするのは得意じゃないんです。

だからそこをサポートしたいと思って、パン工場で規格外の商品を受け取って、それを自転車で移動販売しています。

規格外といっても、見た目には何も変わらなくて、味も美味しいんです。けど、売れない。

――せっかくの美味しいパンがロスパンになってはもったいないですよね。お客さんからの反応はどうですか?

中野に移動販売だけでやっているパン屋さんがあって、中野・高円寺近辺にはそういう文化がないこともないんですよね。

今年(2019年)の3月から始めてみたんですが、お店を開けばお客さんがパンを買いに来てくれます。

――今月にはマルシェへの出店もされるそうですね。

5月12日に、「クリーニングデイ×あおばパンマルシェ」に出店します。

実は4月にも出店していたんですが、それも自分で連絡して。
パン屋さんだけじゃなくて、自分たちが動くこともしたいと思っています。

――マルシェでの売れ残りも、「rebake」にて販売されるんですよね。

はい。

パン業界で廃棄が出る原因は、「売れ残る」か、「作るのに失敗する」かの二つが多いんです。

企業向けだと、必要な量も予測しやすいと思うんですけど、個人に向けた仕事だから、一般消費者がいつ来るか分からない。

特にマルシェはその日の集客力なんてその日にならないと分からないので、ロスを出さないようにみんなすごく少なく持ってくるんです。

――たしかに、イベントでも、けっこう序盤に売り切れているところもありますよね。

そうしないといけないのは、売れる個数を予測できないからなんです。

リスクをとらないために少なく持ってきて、早く帰る。

でも「rebake」で事前に購入してもらうシステムにすれば、セーフティネットになるのではないかなと思っています。

――素敵な試みですね。直接販売するのと通信販売とでは、何か違いは感じますか?

客層が違いますね。

パンを通販で買う人って、パン好きの中でも相当なパン好きなんです。

例えば野菜の通販は、先人たちが切り開いてきた文化があるけど、パンにはそれがない。

だから「rebake」は、通販での購入に慣れている、30代~40代くらいの方が多いんです。

――対面で売る際には、お客さんはどのくらいの年代の方が多いんですか?

60代~70代くらいの方が一番多いですね。

もともとパン屋のお客さんって、30代~40代の方よりも、60代以上の方のほうが割合として多いんです。

――地域の過疎化や高齢化が社会問題となっている今、美味しいパンを手軽に買える「rebake」はとても相性が良さそうですね。現在の「rebake」や移動販売以外に、ロスパンへのアプローチは考えていらっしゃいますか?

パンのロスが出るのはだいたい2通りで、「販売」と「製造」なんです。

それで、「rebake」は販売の際に生まれるロスへ、移動販売は製造の際に生まれるロスへのアプローチなんですが、やっぱり店舗がほしいですね。

前もって売り先が決まっている状態で売って、余ったものは冷凍する。

そうやってロスを極限まで抑えた販売方法を試したいです。

――店舗があると、またできることも広がりそうですね。何か具体的な展望はありますか?

皆さんが想像している以上に、パンの工場ってたくさんあるんです。

三店舗以上あるパン屋さんはけっこう工場を持っていて、一駅に一店舗は工場を持つレベルのパン屋さんがあるんですよ。

小さな人気店なら、マルシェのように「早く無くして早く閉める」やり方もあります。

でも、大型店舗、特に商業施設に入っているようなパン屋さんでは、「夜〇時までは△割以上の商品を残す」というような決まりがあることもあって。

つまり、百パーセント、売れ残りが出る仕組みになっているんです。

工場でも間違いなくロスは出ているはずなので、そこをどうにかしたいと思っています。

パンって冷蔵保存できるの、知ってました?

――パンによっては「焼きたてより少し馴染ませたほうがいい」というような話もありますが、どうなんでしょう。

冷たくなったら美味しくなる生地と、そうでない生地があります。

また、酵母と作り方によっても、日が経つと味が替わって美味しくなるパンができあがることもあります。

もちろん、パン屋さんは焼きたてを食べてもらいたいと思っているし、焼きたては絶対美味しい。

でも、家で温めなおしても美味しいように、パン屋さんも作ってくれているんです。

――「rebake」サイト上ではパンの通信販売だけでなく、「カレーパンの温め方」なども紹介されていますよね。紹介されていた通りに温めたら本当に美味しくて、ビックリしました。

この記事ですね。

https://rebake.me/blogs/reading/5

スタッフに元パン屋さんがいるので、日々教えてもらいながら記事にしています。

パンは温め方次第で本当に違いますね。

――他に、読者の方に伝えたいことはありますか?

「パンは冷凍保存できる」ってことを知っておいてもらいたいです。

冷凍したものを解凍して食べても、変わらぬ美味しさを味わえるので。

――それは、貴重な情報をありがとうございます。家でも実践してみますね!

◆パン屋さんのECサイト「rebake」

2018年11月にリリース。50店舗以上のパン屋と協業し、ロスパンを含めたさまざまなパンの通信販売を開始。5月12日には「クリーニングデイ&あおばマルシェ」に出店するほか、高円寺駅周辺で移動販売もおこなう。

サイトURL:https://rebake.me/

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