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2019.05.30

「当たり前と思っていたことを、疑ってもいい。」人気漫画家が語る、脱サラから書籍化までの小さな積み重ねとは。

橋本ナオキ

イラストレーター/漫画家。4コマ漫画『会社員でぶどり』好評発売中

megumi.m

昼は会社員のアラサーライター。素敵なストーリーを発信したい

「会社行きたくないなあ」「何のために働いてるんだろう…」「残業多すぎ、私って社畜?」「本当は○○がしたかったはずなのに」…。日々社会で働く皆さん、こんなこと思っていませんか? 日本は現在、世界的にも仕事の満足度・やりがいが低い国と言われ、ブラック企業のニュースを目にすることも日常茶飯事です。

そんな中、SNS発のあるお仕事漫画が注目を集めていることをご存知でしょうか?

その名は『会社員でぶどり』。ブラック企業に勤務する鳥が主人公という異色のお仕事4コマ漫画で、会社員(会社鳥?)のニワトリ、でぶどりと後輩のヒヨコのひよが、社会の当たり前や働き方に疑問をぶつけて考え、自分らしい働き方に踏み出していく、という物語です。

実は作者の橋本ナオキさんは、新卒で就職した会社を1年半で辞め絵の道に進んだという経歴の持ち主。ご自身も働き方を模索した経験から、作品には生き方や働き方に関する様々なメッセージを込めているそうです。今回の取材では、そんな橋本さん自身の生き方とでぶどりに込められたメッセージの両方にスポットを当て、じっくりとお話をお聞きしてきました。

作品のファンの方もそうでない方も楽しめる、小さな一歩を踏み出す勇気がもらえる今回のインタビュー。働き方に悩むあなたの心が、ちょっぴり軽くなるかもしれませんよ。

SNSから火がついたでぶどり。もっと多くの人に知ってほしい


主人公のでぶどり(奥)と、後輩のひよ(手前)。ブラック企業に務める2羽。(『会社員でぶどり(橋本ナオキ著)』より)

――まずは2019年3月の書籍化、おめでとうございます! きっかけはSNSだったとお聞きしていますが、現在SNSにはどのくらいのフォロワーさんがいらっしゃるんですか?

ありがとうございます。SNSは、大まかですが現在Instagram20万人、Twitter5万人のフォロワーの方がいらっしゃいます。おかげさまで書籍も早速一度目の増刷をしていただきました。

――すごいですね! きっとお忙しい毎日なんじゃないかと思うんですが、なぜ今回の取材を引き受けてくださったんでしょう…? 私、正直なところ書籍化すぐのタイミングだったので寝る間もないくらいお忙しくて断られるんじゃないかと思いつつ、ダメもとで頼みました…。

大丈夫ですよ(笑)僕ロングスリーパーなんで毎日8時間の睡眠時間は死守してます(笑)。

お引き受けした理由は大きく2つあって、1つは取材していただくと自分の過去の振り返りや考えの整理になるから。もう1つは、僕の作品「でぶどり」のことを全く一切知らない方にも、作品を知ってもらうきっかけになると思ったからです。

漫画家の片鱗? 圧倒的な熱量で先生を引かせた幼少時代。


無邪気な情熱が、先生の度肝を抜くことに…!

――なるほど、ではまず橋本先生のあゆみから教えてください! 会社員を経て「小さい頃からずっと好きだった絵の道に進もう!」と作家活動を決意されたそうですが、幼少期はどんなお子さんだったんですか?

本当に絵の大好きな子供でしたね。昔から、絵を描いて周りの人が笑ってくれたり喜んでくれるのが好きだったんです。どのくらい好きだったかというと、もう周囲が喜ぶを通り越して引いちゃうこともあるくらい絵が大好きでした。

――ん? 引く…?

はい、これは小学生時代のエピソードなんですが…。僕、絵が好きだったんで漫画部に所属していたんですね。部活っていっても小学校のクラブなんて、大体週1くらいしか活動しないじゃないですか。にも関わらず、僕は自由帳の1ページを30コマ以上に分割し、1つのコマに1体のキャラクターを描いて、大量の自作キャラクターでノートを埋めつくしたりしてたんです。他にも1ページ20コマ以上あるコマ割りで、クリップでも留められないぐらい分厚い長編の漫画を描いたこともありました。もちろんこんなことやってくる生徒は僕だけで、先生もあまりの量にさすがにドン引き(笑)。自分でも今思うと狂気ですね(笑)。

――…すみません。その量が出てきたら、自分が先生でも同じ反応をしちゃう気がします(笑)。でもそのくらい、本当に絵が大好きだったんですね。

そんなに絵がお好きだったのに、なぜ絵の道に進まず一度会社員として就職されたんでしょう?

実は徐々に絵を描くことに恥ずかしさを感じてしまうようになって、中学以降はイラストとは無縁の生活を送っていたんですよ。部活もテニス部でしたし。

そして大学3年生のとき、周りがするからという理由で自分も就活。新卒ではとあるIT企業に入社します。配属されたのは、社でも特に優秀な人たちが集まるチーム。当時の僕は「ここで一流のシステムエンジニアになろう!」と決めたんですが…結論を言うと、その人たちに全くついていけなかったんです。

なんとなく就活して入社。そこで気づいた、自分が本当に好きなこと。

もちろん1年目だしついていけないこと自体は仕方ないとも思ったんです。でも、周囲と僕の1番大きな違いは、ITに対する情熱の差でした。当時の同僚達は本当にITが大好きで、会社で仕事をしたあと自宅に建てたサーバーで稼働するゲームを作るような人たちばかり。そんな彼らを見て、「ITを好きでもない自分がどうひっくり返っても勝てない」と悟ったんです。

――スキルよりも、根本の情熱の部分の違いに気づかれたんですね。周囲の方の熱量、それこそ先生ご自身が幼少期に絵に向けられていたような圧倒的な『好き』という情熱に、ついていけなかったと。

はい。その結果僕のやる気は仕事に向かうのではなく、自分が本当に好きだったこと、小さい頃好きだった絵をまた描こうと思い、イラストに向かったんです。そこでほとんどはじめてと言っていいレベルのデジタルイラストで試行錯誤しながら完成させたのが、「でぶどり」という太った鳥のキャラクターのLINEスタンプです。


当時の全力

――おおっ!ここででぶどりが誕生したんですね! あの、めちゃくちゃ素朴な疑問なんですが、どうしてニワトリを選んだんですか?

制作にあたり色々なLINEスタンプを研究していたときに、「白くて丸いキャラクターが多いな」と思ったのがきっかけです。白いといえばニワトリ、丸くしたら太った鳥になったという単純な作り方でした(笑)。スタンプ第一弾はデジタルイラストを始めたばかりなので今見返すと線も歪んで悲惨な出来ですが、逆に味があると友人が喜んでくれた思い出があります。

フリーランスへの決意と沢山の小さな一歩が、きっかけを引き寄せた。

――こうして大好きな絵の道への第一歩を踏み出したんですね。そこから会社を辞めるきっかけとなった出来事はありますか?

本を読んだり、色んな偶然が重なったり、様々なことから影響を受けましたね。

まず本については、この頃「やりたいことのために必要だけど自分が知らないこと」を知ろうと思い、それが書かれた本を片っ端から読み漁りました。当然仕事をしながらだったので、会社帰りは本屋に行き、通勤電車や家にいる時間は可能な限り読書。ランチも断って昼休みのうち50分読むこともありました。これが凝り固まっていた価値観を疑うきっかけになり、自分の価値観が変わっていきましたね。

――なるほど。そんな沢山の本を読まれた中で、特に印象に残っている本はありますか?

印象に残っているのは堀江貴文さんの『本音で生きる』と本田直之さんの『脱東京』、岸見一郎さん・古賀史健さんの『嫌われる勇気』です。当たり前と思っていたことを疑ってもいいんだという気づきや、地方に移住してクリエイティブな仕事をしている方の存在などを知れたことは、とても大きかったですね。

自分は当時新卒で会社に入って苦労するのは当然で環境を変えるとしても他の会社に転職するくらいしか選択肢がないと思っていたんですが、これらの本を通じてその価値観が大きく変化していきました。
ーうっ、分かります。働き方について自分の周りの狭い世界のロールモデルしか知らないと、なんとなく皆そうするから、社会人ってそんなもんだから、っていう思い込みに囚われがちですよね…。本以外には、どんなことがきっかけになったんですか?

他にも、大学時代にちゃらんぽらんだった友達が地元に帰ってバーを開く夢を叶えたと聞いたことは大きかったですね。ある日友達が電話で、「俺、バーを開くよ!」と。それを聞いて「アイツが頑張ってるのに俺は何をしてるんだ…」って、すごく胸に響いたのを覚えています。こうしたこともあり、結局ぼくは入社1年半で会社を辞め、絵の道に進みました。

――こうして聞くと、ご自身で起こしたアクションが色々なきっかけを引き寄せて、どんどん絵の道に進む勢いが加速していったように感じますね!

…でもこの話実はオチがあって、あとで聞いたら友達はバーを開いてなかったんですよ(笑)。

――えっ!

今思えば彼が、「俺(いつか)バーを開くよ!」みたいなニュアンスで僕に話したのを、当時の僕が早とちりしたのかもしれません。しばらくしてから彼に会ったときに普通に働いてたのを見て気づきました(笑)。「やってないんかい!!」とは思いましたが、むしろきっかけをくれてありがとうという気持ちでした。

でも、こういう風に思っちゃうくらい、当時はあらゆる体験が「会社を辞めて好きなことに挑戦するきっかけ」のように感じられましたね。

この1件以外にも漫画『宇宙兄弟』に出てきた「迷ったときはどっちが楽しいかで決めなさい」というフレーズや、ザ・マスミサイルというバンドの「教科書」という曲の歌詞など、当時は何を見ても「会社を辞めてチャレンジするべきだな」と感じていました。

――それも、先生ご自身の決意が、それまで気づかなかった周囲にあるきっかけに気づかせてくれたように感じます。ちなみに会社を辞めて絵の道に進むことは、どなたかに相談して決めたんですか?

いえ、基本的には一人で考えて決めましたね。

決断した後に会社に辞めることとその理由を正直に伝えたんですが、快く送り出してくれ送別会まで開いてくれ、当時の勤め先の皆さんにはものすごく感謝してます(よく勘違いされるのですが、僕が勤めていた会社は決してブラック企業ではなくむしろ良い会社でした)。

会社以外の人からも、この決断について反対したり色々言われたりすることはほとんどありませんでしたね。むしろ「仕事辞めたときどんな感じだった?」って結構聞かれて、潜在的に辞めたがってる人が多いのかな、と感じたことを覚えています。

「毎日SNSへの投稿をしよう!」で、まさかのアイツと再開

――そんなこんなで絵の道へ踏み出されたわけですが、会社を辞めたあとはまず何をされたんですか?

会社員時代の貯金をはたいて、半年間デザインの学校に通ったり、展示会やビジネス系の交流会に出たりしていました。

初めての展示会にて

当時はスキルもお金もありませんでしたが後悔や不安はなぜか無く、とにかく毎日の時間を自分の活動に使えることに対する喜びで一杯でしたね。

その後はビジネス系の交流会でもらった仕事やクラウドソーシング・LINEスタンプ制作などでなんとか生活していたんですが、2017年の末に転機が訪れます。

フリーになってからずっと読んでいた漫画『フリーランスで行こう!』のファンの集いに参加したんです。そこで生まれたつながりからとあるデザイナーさんと知り合い、初めて「SNSへの作品の毎日投稿」を知ることになります。これをきっかけに自分も毎日投稿をやりたくなって、現在の発信スタイルが生まれたんです。

――おお! またしても先生の行動力がきっかけを引き寄せた!

この会に行ってなかったら、僕は今でもクラウドソーシングでギリギリの生活をしていたかもしれませんね。

で、見切り発車で「SNSへの作品の毎日投稿」を決めた僕は、ここでアイツと再会することになります。

――アイツ…?

当時の僕は考えました。

「イラストやスタンプもいいけど、これまでLINEスタンプ作りまくっててもほとんど誰にも届いていないなあ」

「よし、じゃあ毎日投稿するのは漫画にしよう!」

「まずは内容や上手さより、毎日の継続が大事だな。」

「毎日やるならカンタンなやつを描こう。苦手な背景は、思い切って書かない!」

「あとは肝心のキャラクターだな。描くのが簡単なキャラクター、あったっけ…」

「…あ!そういえばアイツがいたな。」

まあるいアイツとの再会

こうして今まで書いたキャラクターから一番描くのが簡単だったでぶどりを主人公に選び、2018年1月1日から「毎日でぶどり」を毎日投稿し始めました。

――ま、まさかそんな理由からでぶどりが選ばれたとは…(笑)!

主人公の意外な秘話がお聞きできたところでストーリーについてもお伺いしたいんですが、なぜこのようなストーリーや設定(お仕事漫画なのに登場人物はゆるい)にしようと思ったんですか?

自分自身が働き始めて本を読みあさるまで、働き方や成長のことを知る機会がなかったので、自分より若い人たちに作品を通じてそういうことを知ってもらいたいと思ったからです。

でも一方で、単に働き方や成長の学びを漫画でアウトプットしても、そういうジャンルの本やブログを読むような限られた人たちにしか届かないとも思っていました。そこで入り口を「ニワトリのゆるい漫画」にして広い層に知ってもらい、よく読んでみると彼らの日常や仕事の中に学びや考えるきっかけがある、という現在の設定にしたんです。

――でぶどりの気軽に読めるのに実は奥深いという魅力には、そういう背景があったんですね! でもいくら継続しやすいものを選んだとはいえ、やっぱり毎日投稿を続けるって大変じゃないですか?

はい。当時は「毎日でぶどり」自体がまだ何の収入にもならない割に結構時間をかけていたので、今より忙しかったですね。イラストの仕事をして、投稿時間ギリギリに当日の「毎日でぶどり」を描く…という日も多かったです。またでぶどり以外の仕事もクラウドソーシングなどで単価が良い仕事は少なかったので、経済的な面でも今より大変でした。

そんな中で励みの1つになっていたのがSNSのコメントでした。特に「旦那・友達に勧めてます」という広めてくれるメッセージがあったのが印象に残っていますね。 本当に面白いものは他人に教えたくなるものだと思っているので、嬉しかったです。

積み重ねが叶えた書籍化と、忘れられない堀江貴文さんのシェア。

――そんなご苦労がありながらも、コツコツと毎日の投稿を続けられたんですね。書籍化についても、そんなSNS投稿がきっかけだったとお伺いしています。

はい。更新をコツコツ半年ほど続け、フォロワー数がもうすぐ1000人になるくらいだったある日、産業編集センターという出版社さんから書籍化のお話をいただきました。

その日は自宅で仕事をしていて、ひと段落して昼寝をしようと思ったんです。ベッドに転がりながらメールを開いたところ、僕の目に相談のメールが飛び込んできました。一気に眠気がふっとんで、とりあえずダッシュでデスクに戻りましたね(笑)。

自費出版かもと一瞬思いましたが、お話を聞くと自費出版でもドッキリでもない、一般書籍とのこと。クリエイターとしての実績が欲しかった僕にとっては夢のようなチャンスで、すぐOKのお返事をしました。

――すごい、まさに漫画みたいな展開…! 当時の編集の方が、SNSを見てご連絡をくれたわけですね?

はい。「note」というメディアを見て知っていただき、そこからSNSでの毎日投稿を見てくださったようです。キャラクター・テーマ・切り口がとても良いとおっしゃっていただきました。また決め手のひとつは毎日投稿していたことだと聞いたのも覚えています。ネタがまだまだありそうという印象だったそうで、続けていて本当に良かったなと思った瞬間でしたね。すぐにSNSほか、イラストや漫画の活動にてお世話になった方々にもお伝えしました。

――小さな積み重ねが日の目を見た瞬間だったんですね。そこから初めての書籍が出るまでの準備期間には、どんなことに取り組まれたんでしょう?

とにかく「売れる本にしなきゃいけない」という思いだけで色々やりましたね。

まずは描き下ろしを含めて110本近くある4コマ漫画をすべて描き直しました。日々投稿しているとミスは頻発するので、キャラクター同士の呼び方や言い回しなど、「このキャラクターはこういうことは言わない」というところはすべて見直して、作品のクオリティを上げるようにしました。

また内容以外だと、本を売るにはたくさんの人に知ってもらわないといけないと思い、フォロワー数を増やす試行錯誤を本格的に開始しました。

具体的には、人気のイラストエンサー(SNSで漫画やイラストを投稿している方)がどんな意図で投稿をしているかをストーカーの如く研究して、SNSで人気になるにはどういうポイントが重要かという仕組みを調べたんです。また自分からイラストエンサーの方に連絡を取って、レクチャーをお願いしたこともあります。研究だけでなく、皆さんから直接教えていただいて学んだことも沢山ありました。

ここでの研究をもとに現在も続いている「あるあるネタ」形式の作品を始めたり、投稿の絶対数が足りないと気づいてからは3ヶ月ほど1日2本投稿にもトライしました。「深く楽しめる要素」と「初見でも楽しめる要素」の両方が必要だということなど、今でも日々の活動で意識していることに沢山気づかせてもらいましたね。一方で、僕の好きな野球ネタなどはInstagramのユーザー層に全然響かないことも分かりました(笑)。

――なるほど(笑)。こうした地道な研究と実践の繰り返しで、ファンを増やしていったんですね。

はい、中でも印象に残っているのは、ホリエモンこと堀江貴文さんが僕の作品をシェアしてくれたこと。あるとき「毎日でぶどり」がLINEニュースになり、堀江さんから「おもろ」とたった3文字の言葉つきでシェアされたときは、イスからころげ落ちました。

会社員時代にも堀江さんの本を読み漁っていましたし、僕にとって間違いなく挑戦するきっかけになった人なので、特別な気持ちになりましたね。

お礼を伝えられたりするのは嫌うだろうなというのは書籍やインタビューから知っていたので特にDMを送ったりやりとりをすることはありませんでしたが、また堀江さんの目に触れるように活動がんばろうと思っています。

――そしてついに、2019年3月13日『会社員でぶどり』が発売されたんですね! 実際に書籍化されてみて、どんなことを感じましたか?

本になったら感動すると思っていたんですが、それよりもちゃんと売れるんだろうかという不安の方が強かったです。でも毎日のように行っていた本屋さんに並ぶ自分の本を見たときは感動しましたね。本屋さんに行くと、並んでる棚をつい探してしまいます。

ほかにも友人が買ってくれてサインを書いたり、知り合いの家に遊びに行ったら棚に置いてあったり。ファンの方がサイン本のある書店でたくさん買ってくださったりと、嬉しい反響でいっぱいでした。

書店にずらりと並んだ単行本。

――今までの苦労が報われる瞬間ですね! そんな記念すべき初書籍ですが、見所やおすすめのエピソードなどはありますか?

単行本にしか収録されていない話の中では、でぶどりとひよの出会いと、ラストででぶどりがついにブラック企業から退職する日の話はおすすめなのでぜひ読んでいただきたいです。 SNSへの投稿ではでぶどりとひよは最初から先輩後輩ですが、書籍内では描き下ろしとして、はじめて出会ったときのエピソードを描いているんですよ。

――この書き下ろしは私も拝見したんですが、とっても素敵でした! 特にでぶどりとひよの出会いの部分では、普段ダラーっとしたでぶどりへの見方が変わりましたね! 実はあんなイケメン(イケドリ?)な部分を持っていたなんて…!

昔に戻れるとしても、最初から絵の道に進めばよかったとは思わない

――ここまで先生の幼少期から現在までの歩みを振り返ってきましたが、いかがですか?

例えば今のご自分から過去のご自分へアドバイスしたいことなどありますでしょうか?

綺麗事ではなく、僕の活動、そして書籍化は、多くの人と出会ってたくさんのことを教えてもらったことと、自分ができる範囲のことを続けたこと、そして幸運によって実現したと思っています。本当に感謝です。

これまでを振り返ると、会社勤めをしていたことも、自分の作家活動や人生においてすごく意義があったと思っていて。この経験をせずにでぶどりを描いてても全然面白くなかったと思いますし、例えばもし就活の時期や大学生・高校生に戻れるとしても、「最初から絵の道を選んでおけば良かったな〜」 とはあまり思いません。むしろ足りないものが多かったからこそ、見てもらうための工夫や継続ができたと思っています。

――たしかに会社勤めををしていなかったら、そもそもこういった働き方や生き方がテーマの作品にになっていなかったかもしれませんね。今回取材させていただいて、先生のこれまでの生き方自体が作品に込められたメッセージに非常にリンクすると感じたんですが、登場人物たちにもそういった思いや経験が反映されているんですか?

登場人物でいうと、僕の一番意識が高い部分がひよで、一番意識が低いところがでぶどりというイメージです。なのであの二羽のやりとりは考えなくても自然と描けます(笑)。

――そうなんですか! 確かに1人の人間の中にも色んな自分がいますよね。「チャレンジしたい」「でも怖い」「いや、やらなきゃ始まらないよ!」…。誰しも自分の中の様々な気持ちの間で揺れながら、その中から答えを見つけていく気がします。作中でも、でぶどりがひよに相談したり背中を押されながら、最後は自分で一歩踏み出すシーンが印象的でした。

そうかもしれませんね。

悩みを持っているときは「自分の尊敬する人ならどう考えるか」「自分は本当はどうしたいか」と考えると、意外と自分の中に答えがあったりすると思いますよ。

今度は自分の作品が、誰かが羽ばたくきっかけに

橋本ナオキ公式ブログより

――これからでぶどりを通じて、どんなメッセージを発信していきたいと思っていますか?

この作品では、当たり前とされていることを疑うことを、ゆるい雰囲気で伝えています。僕は社会を大きく変えるようなことは発信できないので、読んでくれたたった一人が「そうか、こういう考え方もあるのか」と気づいて行動を少しだけ変えられるようなメッセージを伝え続けたいと思っています。

そういう意味では、日々がつらかったり何かに悩んでいる人にぜひ読んでもらいたいです。僕自身がたくさんの本を読んで違う視点を知ったように、今度はでぶどりが誰かにとってその役割になれれば嬉しいです。

――今度は、でぶどりが誰かのきっかけになるんですね! 今後の活動について、目標や展望はありますか?

最終的には1話2分ずつくらいのアニメになったりしたら嬉しいなと思っています。

ありがたいことにグッズやアプリなどで様々な展開のお話をいただいており、こういった結果もとても嬉しいのですが、まずはでぶどりを通じて発信するメッセージの方を大切にし続けていきたいです。

――これからも作品が楽しみです! また読者の中には今後の生き方や働き方に迷う人も多いと思うんですが、先生からアドバイスはありますか?

僕も働き方に悩んでいたんですが、状況が大きく変化するまでにしたことは本当に小さな行動の積み重ねです。

中には勇気のいることもありましたし、やらなくてよかったと思うこともたくさんありました。

小さく行動し続けるのに加えて、たまに振り返って「これでいいのかな、もっとよくできないかな」と迷うのも大事です。

目標に最短でたどり着こうとするのではなくて、次にできる小さな一歩を踏み出し続けるといいんじゃないかなと思います。

――素敵なお話を本当にありがとうございました。最後に読者の方へのメッセージをお願いします!

いつも「毎日でぶどり」を読んでくださる皆さま・そして今回の記事で作品を知ってくださった皆さま、ありがとうございます。

毎日続けていると大変なときもありますが、日々いただくコメントを見るとがんばろうと思えます。今後も描きたいエピソードがたくさんあるので、これからもよろしくお願いします。

そして単行本『会社員でぶどり』もぜひよろしくお願いします!

在庫がない場合はぜひ書店での取り寄せや電子書籍もご検討ください。(購入はこちらから)

【取材した方のプロフィール】

橋本ナオキ
フリーランスのイラストレーター/漫画家。1992年大阪生まれ。2015年に関西学院大学を卒業後、東京のIT企業でシステムエンジニアとして勤務するが1年半で退職。実務経験はなかったものの、若いうちにやりたいことに挑戦するため、イラストレーター/漫画家として活動を開始する。
当たり前だと思っていたことを疑い、自分の頭で考える大切さを伝えるため2018年に「毎日でぶどり」の投稿を開始し、1年でフォロワー数14万人を突破。2019年現在はInstagram、Twitter、noteで毎日投稿を継続しながら、4コマ漫画制作やSNS運営・記事作成などの仕事に携わっている。
Instagram : https://www.instagram.com/everyday_debudori/
Twitter : https://twitter.com/debu_dori
公式サイト : https://www.abhachi.com/

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