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2019.05.30

山口県阿武町の福賀すいかを日本一に! 農村生活が体験できる援農にも尽力 梅田将成さん

梅田将成

山口県阿武町にUターン。スイカ農家に弟子入り後、新規就農者となる

鶴田治奈

名前の読み方よく間違われる。福山雅治さんの「治」と同じ読みです

山口県阿武町(あぶちょう)という小さな町で、徹底的に「量より質!」にこだわった「福賀すいか」を栽培している、うめちゃんこと梅田将成さんにインタビューしました。

大学生活を送っていたものの行き詰まり、阿武町にUターン。見習いの時期を経て2018年に新規就農。そんなご自身の経験もあって、繁忙期などの数ヶ月、農村のシェアハウスにて共同生活をして農作業のアシスタントを行う「援農」についても「生き方に出会い直すきっかけになれば」と力を入れています。
【聞き手:鶴田治奈(はるな)】

食べたら分かる! 試食してその場で買いたくなるすいか

阿武町の「福賀(ふくが)」という地区で栽培されている「福賀すいか」。通常すいかは1株から2,3玉を収穫するところを、福賀すいかは養分を集中させるために1玉しか育成しないなど独自の方法で栽培しています。

筆者(以降、はる):2018年に新規就農して、すいかの栽培から出荷までも経験されて、実際やってきたからこそ感じることなどあると思うのですがどうでしょうか?

うめ:同じすいか生産部会の大先輩たちが誰一人として諦めていないというか、絶対にこのすいかで日本一になるということをみんなが思っているんですよね。毎年毎年もっといいすいかにできると思いながら試行錯誤しているし、その意識の高さみたいなものに自分自身も引っ張られている気がしています。

はる:全員がそう思っている環境ってそうそうないでしょうね!そんな素晴らしいところに参入できたのは色々なご縁があったかと思うのですが。

うめ:このねぇ、自分の持っている運の強さはすごいなーって自分で思うんですよね。は、まずは量を収穫できるように栽培してくださいと指導されることがほとんどです。いきなりブランド品のようなおいしいものを作ることを目指すと失敗しますからと。それは僕も間違いないと思うんですよ。でもそういうところをすっ飛ばして「どこよりもおいしいものを作るんだ!」という世界に入らせてもらえて。でもその分、あの、指導は厳しい(笑)

はる:そうなんですね(笑)下手なもの作れないでしょうからね。

うめ:そうですね。師匠も本気なんで。

はる:実際に食べた方から感想を聞くことはありますか?

うめ:僕たち生産者が週末に小売店に行ってお客さんの前でカットして試食してもらうということをやっているのですが、そのまま購入して下さる方もいます。食べたらやっぱり違うって言ってくれるんですよね。

はる:本当においしいと思わないとその場で食べた人が購入しないですよね。うめちゃんのブログからも、福賀すいかに対する確信がすごく伝わってきます。

うめ:「福賀すいか」という名前だけで出荷して、購入される方はどの農家が作ったすいかなのかは分からないんです。なので全生産農家が責任を持っているし、収穫する前にみんなで集まって切って中身をチェックし、糖度の検査などもして、その段階でダメだという判断になったら出荷できないようになっています。
はる:それはストイックですね。

うめ:そうしないとブランドの価値が保てないので。確信がブレないよう、こちらが最大限の恩恵を受けるためにはこれくらいのリスクはとるよね、ということはしています。

はる:すいか農家になろうと思ったのは、自分たちで値段を設定しているところに魅力を感じたからとのことでしたが。

うめ:その県で生産量がトップの作物は、もっと生産量を増やしたいので県は力を入れるんです。そのため我々みたいな量で勝負していない産地は不利になるんですよね。こちらで決めた価格で取引してくれる、個別のお客さんや小売店からの注文を、今後いかに増やしていくかを考えています。

はる:おいしいすいかを栽培するだけでなく、あらゆる努力をされているんだなと思いました。

うめ:これから農業は大きく2通りに分かれるだろうなと思っています。1つは、食料需要に応えるための農業。人間が生きていくために食べる食料を作る農業です。でもたくさん作らなきゃいけないし、多くの労働力が必要でめっちゃ頑張らなきゃいけない。となると当然人がやりたがらないからAIにやれせたらいいじゃんとなって、これからどんどんAIに置き換わっていくでしょうね。

はる:これからの農業はAIが、という広告を私も見かけることがあります。


うめ:もう1つは、本当においしいものが食べたいというニーズに応える農業。機械化やAI導入が進めば進むほど、本物の味を食べたい、贈り物には特別なものを贈りたいという消費者の意欲が高まっていくはずです。僕らのすいかの価値も時代とともに高まっていくだろうし、自分たちの目指すすいかを作る努力はこの先も未来があるんだろうなと思っています。

援農に参加する人はみんな地方移住を考えている人?

はる:阿武町で援農を受け入れるようになったのは今年、2019年からなのでしょうか?

うめ:去年はモニターとしての参加者を受け入れて、今年から本格的にやっています。元々阿武町の行政でシーズンワークをたくさん作って、春の仕事、夏の仕事…と組み合わせることで町で1年間を過ごせるようになればという発想があって、その事業の一環として始まったんです。

はる:そういう経緯があったんですね。行政でも話があったところで、うめちゃん達の考えていたことが重なって。

うめ:そうですね。でも最終的には、説明会の予算を組んだり受け入れのためのシェアハウスを運営したりと、援農のプログラムを自分達でデザインしていけたらいいなと思っています。

はる:援農に参加される方は期待がある反面、不安もあるかと思うのですが、どのようなことを不安に感じられることが多いのでしょうか?

うめ:仕事の不安もあるけど、どちらかと言えば知らない土地にやってきて、はじめましての人と寝て暮らすという、共同生活に対してですね。そこの不安を払拭しておかないと毎日の仕事の疲れも癒されないということになりますし。予め想定はしていても実際に人が住み始めてから浮き彫りになることもあるし、仕事じゃない部分のケアを本気でやっておかなければいけないというのは、もう何年かは力を入れなければいけない課題になるだろうなと思っています。

はる:援農に参加してみて、生き方を考えるようになったという方もいるようですが。

うめ:会社を辞めて人生を考え直す余白が欲しくて、2,3ヶ月農作業やってみたいという人もいるし、旅が好きで自分が住む場所を一定期間でポンポン変えちゃうような人が来ることもあります。どうも援農のゴールデンルートみたいなのがあるらしく、北は北海道から南は沖縄まで季節ごとにいい感じで作物があるので、例えば夏暑い時期は富良野で作業して、だんだん南下していって、冬場は和歌山や愛媛でみかんやって、というような。

はる:ゴールデンルート(笑)

うめ:そういう人同士が3ヶ月とか同じ時間を過ごすと、その人と同じ生き方をするかは分からないけど、出会いをきっかけに今までの自分とは違う生き方を作り直しちゃうような人もいるんでしょうね。

はる:援農を取り入れてみて良かったと思うような出来事はありましたか?

うめ:これまで知らなかった生き方をしている人との出会いというのは、受け入れている僕たちにもあるんです。地域の人たちが今まで見たことのないタイプの人に出会って認識が変わるという、こう、大きな扉を開けて風が出たり入ったりする人の流れを、これからも繰り返していきたいと思いましたね。

はる:援農を初めて知ったとき、地域の人としてはこの場所に定住して欲しいということが最終的な目標なのかなと私は思ったのですが、むしろ別の場所に行く人がいてもいいのですね。

うめ:いや…これは地域によって認識が分かれていて、おそらく多くの地域住民はそのままこの町に住んで欲しいと思うわけですよ。なんだけど、日本の人口が減っていく中で、全ての自治体が定住者を獲得したいと言ってると、みんなで奪い合っているという状態になるんです。でも援農のような動きを色んな地域で作って、その人が夏はうちの地域にいて、冬になったらまた違うところに行ってということになると、奪い合いから、分け合いに変わるんです。

はる:なるほど。

うめ:それが阿武町なら阿武町の中に春から冬まで様々な仕事を作って、春に来る人がいて、夏の仕事を目当てに来る人が別にいて、ということを春夏秋冬やっていったら疑似的に人口が1人増えているみたいなことになる、というのもおもしろいかなと思っています。

はる:私が今までこういう取り組みがあるということを知らなかったので、斬新な考え方だなぁと思います。

うめ:でも移住定住を強制しようという気持ちにならない最も大きな理由は、その人がどこにいたいかということが大事だと僕は思っているからなんです。この町に来て僕らと一緒に仕事をしたことが、その人の人生にとっていい経験になってくれたらいいですね。

はる:心が広いですねー。

うめ:僕自身がかつて葛藤や挫折があって、今は自分なりの幸せを作ろうとしているし、もし悩んでいる人がいるのであれば、とりあえず来てみて次への1つのきっかけにしてもらえればいいのかなと思います。そういうことを繰り返していけば、たぶん1人2人ぐらいは定住する人も出ますよ(笑)
はる:援農に興味を持った人がどこの援農に参加したらいいか、選ぶ目安やポイントなどありますか?

うめ:援農についてのイベントに参加したときに、いくつもの援農を渡り歩いた人から聞いたのですが、もう数を体験するしかないと。私生活のケアもした方がいいというスタンスのところもあれば、私生活の部分は自分で何とかしてね、というところもあって、それぞれの地域がそれぞれの尺度でやっていて本当に様々の状態です。

はる:そういう状況なんですね。
うめ:そのときのイベントで、私生活のケアに必要なことや、農家さんとのコミュニケーションをスムーズにするためにはどうしたらいいかというノウハウを、地域で共有して整備していきたいね、という話も出ました。援農をやっている地域同士が連携し、夏の援農の地域と冬の援農の地域とでお互い人材の紹介をして、人材募集に使う労力を軽減できたら、ということも考えています。

援農は手段として使うだけ。目的は「生き方を選び直す」こと

はる:最近は、若い人が積極的な理由で田舎に移住するようになったように私は感じているのですが。

うめ:都会でサラリーマン的な働き方をしていたら、どんなに頭の中でいい夢を抱いていたとしても、生活を維持するためには仕事をしてお金を稼がなきゃいけないですよね。だけど田舎だったら食べ物が手に入るんだったら食べていけるし、家の壊れたところを自分で修理する技術があれば暮らしていけるし、生活のために必要なものがお金とは限らない状態なんです。生き抜くためのコストがすごく低いので、やりたいことに取り組むということ対して田舎は相性がいいのかなと思います。

はる:私は今は都会で生活をしているので、思い当たる節があります(笑)

うめ:とはいえ、何も考えずに農業を始めてもうまくいくわけではないといった現実もありますし、田舎がいいのか都会がいいのかという話じゃなくって、自分の幸せをどうやって作っていくかを考えなきゃいけない、今はそういう段階なんだろうなと思ってます。

はる:うめちゃんの場合は、今の道を選んで良かったと思っていますか。

うめ:大学で周りは当たり前のように単位を取って就職していく中、自分はそこは諦めたというような敗北感が最初はあったんです。でもその敗北感も押し切って、地元に帰ることを選んで農業に飛び込んで、今になってその決断が全然間違ってなかったと思いますね。

はる:もし今、同じように悩んでいる人がいるとしたら何か伝えたいことはありますか。

うめ:僕はみんながやっている当たり前のことができなくてすごく悩んだのですが、今、できなければいけないと思っていたことができなくても何とかなってるわけです。周りができていることができないから自分はダメなヤツ、というわけではないということは伝えたいですね。周りができてるからそれは人生で本当にやらなきゃいけないことなのかっていうと、意外とそうでないっていうのは田舎に来ると余計なんですけど思います。

はる:私からしたら、20代のうちにこれというものが見つかったうめちゃんはうらやましいなという気もします。

うめ:僕も結果だけ見れば大学行かなくても良かったじゃんっていうことだけど、自分の決断が遅かったとは思ってなくて。人生を選び直すタイミングって、本気でやっていれば遅すぎるなんてことはないんだろうなと思っています。

はる:そうですね。

うめ:生き方を選び直すとか生き方と出会い直すっていうことを、僕はあくまで援農とか農業に携わっているから手段の一つとして使っているわけですけど。大きく言えば、その人が今までやって来なかったけど、ひょっとしたらおもしろく感じるかも知れないような生き方に出会い直すための時間と場所を、田舎に作りたいですね。その目的のために援農を使っているというイメージです。

はる:こういう動きがもっと盛んになって、より多くの人が幸せな生き方ができるようになればと思いました。お話いただきありがとうございました!!

もうちょっと詳しい情報について

阿武町のことや、援農のこと。もし興味を持った方がいたらどうしたらいいかうめちゃんにお聞きしたところ、「僕にTwitterでDMをくれればいいですよ!」とのことでした。

うめちゃんTwitter:https://twitter.com/crfmuc0nd

また「山口移住計画」という団体が主催の、2019年6月に東京で開催されるイベントも紹介いただきました。

阿武町やそのお隣の萩市で活動されている、うめちゃんをはじめおもしろい取り組みをされている4人のゲストの方々から直接お話を聞くことができる機会になっています。

イベントページ:https://tonarigurashi.peatix.com/

すいかについては2019年版の注文フォームはまだ作成されていませんが(記事執筆時点)、注文できるようになったらうめちゃんのブログでも告知される予定です。

福賀すいか。私も今年、食べてみます!!


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