SPOTWRITE > アート・カルチャー > やりたいことを仕事にし続ける人生には、何が必要か?〜「守りながら攻めていく」。アートディレクター・漫画家ホリプーさんへ、駆け出し大学生からの相談話
2019.05.30

やりたいことを仕事にし続ける人生には、何が必要か?〜「守りながら攻めていく」。アートディレクター・漫画家ホリプーさんへ、駆け出し大学生からの相談話

ホリプー

マンガ家・アートディレクター。(有)ガリガリ君プロダクション所属

しーちゃん

絵と言葉で生きるお絵描きライター。片耳難聴や心身症を抱える大学生

そんな風に悩んでいたある日、Twitterのアカウントをフォローしていた「ホリプー」さんに取材をする機会を得た。

ホリプー、こと高堀健太さん。

武蔵野美術大学を卒業し、赤城乳業株式会社でアイスのパッケージデザイナーとして8年間会社に勤めながら、SNSでの漫画やイラストでバズを生んだ。現在は赤城乳業の子会社である有限会社ガリガリ君プロダクションに移籍し、アートディレクター兼漫画家として挑戦を続けている。

常に絵を仕事にして生き続けている彼に、私はすがるように、今の悩みをぶちまけた。

――絵を描くのがしんどいです。でも役に立ちたい気持ちはあるんです。仕事として描き続けられるバイタリティってなんですか?

しばらく静かに聞いていた彼は、ふっと口を開いた。

「僕に、描き続けよう、っていうバイタリティはないですよ。

ただ、描くことは僕の習慣なんです。習慣だから、作品を作り続けられるんです。」

うつむいている私に、彼は優しく語り始めた。

「僕にとって、絵は言語なんですよ」

幼稚園の時に「お絵描き帳」が、配られませんでしたか? 大きな画用紙の。

――はい、ありました!

僕は幼稚園で描くだけでは飽き足らず、家にも持ち帰って描いていました。卒園する頃に描き切ったお絵描き帳を重ねたら、自分の背丈を越えていたんです。

――えっ、すごい。厚さ1cmだとしても、100~110(卒園児5歳の男子平均身長)冊以上は使い切ってるということですね……。

そうです。

僕は絵がないと、遊ぶことも友達も作ることができないと思ってました。(笑)

――なんと。

絵を描いていたら、誰かが覗きに来て、「このアニメのキャラクターを描いて!」って言ってくれる。それで僕は描く。彼は喜ぶ。そこから会話が始まって、「絵、うまいね」って褒めてくれる。そうやって友達を作っていました。

周りの人が褒めてくれるから、嬉しくて描き続ける。それを繰り返して絵が好きになり、子供の頃から漠然と、絵で生きていきたいと思っていました。

僕にとって、絵はコミュニケーションツールなんです。

ある意味、言語なんですよ。

ホリプーさん「上下線のふたり」18話より:instagram.com/horipu_

――絵は、ホリプーさんの言語……

そう。絵は僕にとっての言語だから、それ以外に生きていく選択肢を考えられなかったんです。気づいたら、描くことが習慣になっていて。

――好きで、気づいたら習慣になっていた、そして職業に、というのは、一番理想的じゃないですか!でも、やりたいことをその流れで職業にできる人って、もとから才能がある人に限られてる気がするんですよね……そういうの、すごく憧れてしまいます。

うーん。才能というよりは「できること」を増やしていったからだと思います。

「デザイナー」とか「漫画家」みたいな職業に就けたのは、いきなりそれを目指そうとしたわけじゃなく、まず小さい頃から絵を描く習慣があったおかげなんです。なので、「どうしたらデザイナー、漫画家になれますか?」という若い人には、自分の好きなことをして、「できること」を増やしてみたら? と、よく言うんですよ。

――なんで「できること」なんですか?

例えば、楽器を弾けるからといって、「ミュージシャンになりたい」とすぐには思いつきませんよね。けどライブに行って興奮したり、周りが熱狂しているのを見たりして、「かっこいい!俺もミュージシャンになりたい」と思ったら、そこに「楽器が弾ける」とか「共感できる歌詞」とか「ライブパフォーマンス」のような「できること」を増やしてどんどん積み上げていく。すると、より具体的な職業への道が見えてくる。

自分の欲求が赴くほうへ進んで、「できること」を増やしていくと、夢って叶いやすくなるんですよ。

――ふむふむ。だから「できること」を、ってアドバイスするんですね。

そうです。

――けど、私は「できること」である「絵を描くこと」が、続かないんです。体が動かなくなっちゃうんです。

やりたいことは、今できていることの中にある

――「できること」でも、続けられないっていうことは、やっぱりやりたくないっていうことなのでしょうか……。

今できていることや得意なことって、なんで身についてるか分かりますか?

――えっ。考えたことなかったです。なんとなく気づいたら身についていたような……あれ? これって、私が憧れている「好きで気づいたら習慣になっていた」に近い?

今できることって、忘れているかもしれないけれど、
自分の可能性を感じたり、やりたいと思って身につけようと選んだ理由があるはずなんです。

――なんとなく最初からうまくいく、とか、しょうがなく身につくこともありませんか? 乗り気じゃないけど、この仕事ついちゃったから身についた、とか。

あるかもしれませんね。でも極端な話、めちゃくちゃ嫌だったら、そもそもやりませんよね。

――確かに。

ストレスに人は耐えられないもんなんです。なんやかんや今できているなら、どこかにやりたい気持ちが隠れているはずだと思いますよ。

だから、まず今自分のできることを正しく「価値」として把握すべきだし、今自分が持ってる「できること」は、やってもいいことなんだって、認めてみるといいんじゃないでしょうか。

――そうか、できることは、やってもいいこと……。

私は美術の勉強もしたことないし興味なかったので、絵を書く資格なんてないと思っていました。去年描き始めたばかりでクオリティも低いし。世の中には美大に行く人たちがいて、「才能に敵うわけない」って。私なんかが、本当はやっちゃいけないのではとすら思ったり……。

どうして比べちゃうんですか?

――だって、圧倒的な人がいる市場ではお金にならないし……。

やりたいこと、って、そもそも「それをすることで自分が幸せになる」ためにすることですよ。

そして、本来、絵は楽しむもので、比べるものではないはずです。

――なんとなく分かってはいて、仕事を楽しいって思えば良い、と言い聞かせるんですが……なぜか気がついたら比べてるんですよね。向いてないんでしょうか…….。

それには、ちゃんと理由があるんですよ。

――えっ。

大人になってからの「絵」という存在は、趣味にしろ仕事にしろ、描いていくメリットデメリットを考えるし、今まで見たものの影響を強く受けやすい状況です。

なぜなら大人は子供より生きることに責任があり、時間がシビアだから。

だから、好きだとか習慣化というのが抜け落ちてしまうんです。
食っていく、ということが前に来すぎてしまう。

――図星です……。できることだとしても「所詮食っていけなければ意味がないんだ」と、そればっかり考えていました。

お金につなげるのは大事なことです。だけど、まずは絵を習慣化するところから始めないと、他の誰かより上手くないとか、仕事にならないとかで悩んでしまいますよ。

「好き」を習慣化するには?

――習慣化するところから始める……。

僕にとって絵は幼い頃から当たり前のように描いてきましたが、それでも「描き続ける」っていうのが出来なかったことはありました。

――えっ、そうなんですか?

会社員になったら、出来なくなったんです。家に帰ったら疲れ切ってしまって。

だけど、絵を描く習慣が途切れてしまうと、僕は人生そのものが楽しくなくなってしまう。それでSNSにイラストをアップするようにしたんです。1日1絵ではなく週に1絵というできそうな目標で、絶対に絵をあげ続ける、という習慣をつけようと思いました。

そのために、稼いだお金を家電に費やしました。ロボット掃除機や食洗機など。面倒だなあと思う家事を機械にさせて、自分が絵を描ける環境を整えたんです。

――環境を変えることはやはり大事ですね。自分もそういう環境にしなきゃ……

でも、ただ環境を変えればいいってもんじゃなくて、ポイントもあるんです。

――ポイント?

「自分の好きな理由」を守ること。

――好きな理由を守る。

絵だけ描きたいなら、引きこもってノートに描いていてもいいわけですよね。
だけど僕は絵を描くだけでは幸せにはなれないんです。

僕は幼少期に経験した「周りの人が喜んでくれたり褒めてくれるから、嬉しくて描き続けられたこと」で、絵が好きになっていたんです。絵を描くことは「自分と人を幸せにする手段」だと思っています。

ホリプーさん「上下線のふたり」20話より:instagram.com/horipu_

だから、描いた絵をSNSにあげているんですよ。
そうすると、“いいね”やコメントといったフィードバックが返ってくる。似顔絵を依頼されて、描くと喜んでくれる人がいる。

習慣にするため、小さい頃の好きになった理由と同じ状況に身を置いたんです。
それで、僕はずっと描き続けることができた。

――習慣化、って聞くと、自分を厳しく律するイメージがありました。そうではなくて、自分をどれだけ喜ばせ続けられるかを意識すべき、っていうことですね。

そうです!

自分の好きな理由を知っていて、途切れないように守る。

これが大事です。

そこをちゃんとやっておかないと、いくら環境を変えても、続けていくことはできません。

――私がいま続けられないのは、向いていないから、とかじゃなくて、この好きな理由を守っていないからなのかも……。

まず、今できることを浮かべた時、どんな状況で喜びを得られるのかを考えてみるといいですね。そして、その状況を自分の周りに作る。

――考えてみると……私は描いた絵が、ヒトモノことの魅力を引き出す手助けをし、感謝されて、自分が役に立っていると実感することで、確かな喜びを感じていました。ライターとして文章を書く時も、同じような場合に幸せを感じます。「自分の表現が人の役に立っていると思えることで、喜びを得られる」んだと思います。

いいですね、そんな感じに自分が喜ぶ状況を分析していきましょう。

僕は自分の好きなものや喜ばせる方法を、いっぱい知っていて、守っています。
だから、何も計画立てなくても、必然的に体が夢のほうに動いていくんです。
「嫌なことを叶えたくない、ずっと喜んでいたい」と思ってるから。

――好きな理由を知っていて、途切れないように守ることで、習慣化できる。習慣化することで、体が勝手に夢に向かう……確かに。自分を喜ばせる方法を知っていれば、たとえ壁を感じても、原点である「好き」な気持ちに返って、なんども再出発することが出来そうだと思いました。

絵を捨てることは、出来なかった

好きな理由を守る、ということについて、もう少し話をしましょうか。

――お願いします!

僕、武蔵野美術大学では、デザイン学科の学生でした。大学に漫画学科はなかったのですが、デザイン科に入れば、漫画やイラストもやれるかもしれないと、予備校の時に知って。

――それで、デザインというものに出合ったんですね。

はい。特に“広告デザイン”に出合って、「伝える」ということに夢中になりました。当時は、ユニクロのロゴやセブンイレブンのコーヒーマシンで有名な佐藤可士和さんがたくさんメディアに取り上げられていて、予備校でもその番組を見ていました。その影響もあり、余計に広告に惹かれていました。広告について勉強し、卒業後も広告業界に進みたい、と思ってました。

――とても美大生っぽい…(偏見)。

けど、ある日思ったんです。僕は広告に向いていないかもって。

――え!?

大学の学祭が終わるときに、1週間くらい真剣に描いていたポスターを、学生たちが破いて剥がしているのを見て、ショックを受けてしまったんです。

――うわー!それは……。

いらなくなったから捨てる。これって当たり前かもしれないけど、そういうのが僕は悲しかった。広告も、目立って貼られる時期を過ぎれば、外さなくてはいけません。消費されていくことを前提に、作り続けることは嫌だなあと思ったんです。

――絵が、消費されていく感覚……なんだか身に覚えがあるかもしれません。

その時、ハッと私の頭に浮かんだのは、自分がバイト先で描いている商品ポップのことだった。

色鉛筆を使って時間をかけて描いた絵。だが、入れ替えのサイクルが早いコンビニでは、すぐに鮮度が落ちてしまう。
そして「描ける側の人」にとって絵なんて簡単に生み出せるものだと、「描けない側の人」は思いがちだ。
パートさんに「ちゃちゃっと描けるよね!」と、次々に絵を頼まれる。なんとか描いたとしても、昨日描いた絵が一夜明けたら捨てられていたこともザラにある。深夜の店員が掃除するらしい。

だから、今まで描いた作品はほとんど手元に残っていない。
自分が守りきれたもの以外、どこかの焼却炉で灰になっている。

私が絵に対する抵抗感から抜けきれないのは、こうした「無情な環境」で絵を描いているからだ。そこに、私の喜びはなかった。

ずっと感じていたモヤモヤの正体が、ホリプーさんとのお話で明らかになった。
描くことが向いていないのではない。
そんな風に消費されるために、私は、私の絵を使って欲しくなかったんだ。

――ああー。私は絵に関してどこにモヤモヤしてしまうのか、実は具体的に分からなかったんですが……消費されていることに対してだったと、今分かりました。コンビニの商品ポップって、まさに消費の最先端だから。「私の絵は、捨てられている。自分の描く絵に価値はないのだ」、描いても意味がない、なんて思ってました……。

下請けのイラストレーターさんやクリエーターさんで、そういうフラストレーション溜まっている人は多いと思うんです。消費のために作り続けて、自分が消耗していく。

――意地悪な質問になるかもしれないですけど、パッケージデザインも、アイス食べるときに袋破っちゃうので捨てられますよね?

もちろん(笑)。でも、お客さんがそのパッケージに、惹かれて手に取ってくれたあとなので。たくさんのアイスが並ぶ中から選ばれて買われて、持ち帰られて。食べる瞬間まで、その手の中にある。その大事にされている感がいいなって思ったんです。僕の「このアイスはいいよ!」っていうメッセージが、ちゃんと相手に届いている感じ。

デザイン賞を受賞した「マシュマロアイスでしゅ。」:instagram.com/horipu_
https://www.akagi.com/products/marshmallow_ice/marshmallow_ice_strawberry.html

同じデザインでも、場所によって幸福感が違う

パッケージデザインも広告みたいなものではあります。けれど、たとえ消費されてしまうデザインでも、僕は「伝えたい人が必ずそこにいて喜ぶ」デザインがしたいと思いました。大げさかもしれませんが、誰かの人生を彩り豊かに変える。そういうことに関わりたいと。

――影響力はあるかもしれないけど、街で目に入っても、自分の生活と関係ない人にとってはなんとなく素通りしていくままの広告より、確実に個人の手に届くパッケージデザインは、まさにホリプーさんがしたいことにピッタリですね! 会社も商品が売れて喜ぶし、お客さんはパッケージでジャケ買いして、さらに美味しいアイスに出合えたら幸せになりますもん……。

今、イラストレーターとして似顔絵を描いている時も同じことを思うんです。

似顔絵イラスト:https://horipu.com/

「大事にされて、人に喜びを与えられる」ってことが、僕が幸せを感じるために大切な要素だと思っています。

――(ここでも、自分を幸せにすることを、ちゃんと分かって守っている……)

そういえばSNSで、しーちゃんがあげている絵を見ましたよ。

――わわわ、ありがとうございます…!!

素敵だから、自分のできる絵を持っていった時に、一番幸福感を感じられる場所を、大事にしたらいいと思います。自分が出来ることを活かせる場所を見つけることが、自分のため。

同じ絵を描くことでも、意味が違ってきますから。

できることは1つにしなくていい

それに、ただ絵を描くだけじゃなくて、別のできることと結びつけるのもオススメです。僕は「いろんな体験を集約して何か1つのものにする」というのを心がけていて。

――体験の集約。

僕が漫画を描き始めたのは2017年なんですけど、結構すぐそれらしくなったんです。というのも、デザインの勉強をしてきたおかげなのかな、と思って。

漫画とデザインって、同じ絵でもベクトルが全然違うんですよ。デザインは何かを代弁したり人に伝えることが前提ですが、漫画は作者の表現したいものや世界観に惹き込むことで成り立っている。

――すごく正反対の知識や技術が必要な気がします……。

だけど、そんな畑違いとも言える漫画を形にできたのは、デザインの知識があったからなんです。

物語やキャラ作りには悪戦苦闘していますけど、デザインを学んでいたから、テーマの絞り方や読者に伝わりやすいレイアウトについては考えることができた。

――伝える技術をデザインの体験から持ってきた、ということですね。

逆に、漫画をやっていることで、デザインに物語を込めるようにもなりました。見た人の過去の経験が引き出されるように、物語の伏線を張るようにデザインしてみよう、と。

――物語の伏線を張る?

例えば、今(2019年4月〜)、「ガツン、とすっぱいレモン」っていうアイスが販売されているのですが、このデザインの色使いには青春の物語を込めています。

赤城乳業ホームページより(2019)

商品の撮影時に、カメラマンさんにどうコントラストを効かせてほしいとか、非常に細かいところまで設定します。「ガツン、とすっぱいレモン」はクッキリと鮮やかな夏の日差し。初恋はレモンの味というように、みずみずしさや青春時代の鮮やかな気持ちを、パッケージを手に取った人に想起してもらいたいと思って作っています。ただお洒落だとか美味しそう、じゃなくて、物語を手に取って味わってもらいたいんです。

――私はバイトで商品を宣伝するポップを描いていますが、物語を考えて届ける、という発想は浮かびませんでした。単にかっこよく描いたり、商品の魅力的な部分だけを伝えるだけでした。本当に、漫画家さんならではの発想の輸入だと思います。

世の中に漫画家やデザイナーをやってる人はいるけど、漫画家兼パッケージデザイナーの人はなかなかいないんじゃないかな? どちらの仕事にも自分の知識を提供できると、マルチに活動している人ならではのスキルを発揮できると思います。

ホリプーさん「上下線のふたり」9話より:instagram.com/horipu_

――いろんな体験を上手に集約して、正反対のこともちゃんとやりたいことにしている……すごい。そういえば、これが初めにおっしゃっていた「具体的な道を見つけるために、できることを増やす」につながりますね。ホリプーさんは、自分のできることをちゃんと把握して、いつも活かそうと考えている……ちょっと私も、今までの体験や自分ができることを、全部リストアップしてみます。

職人となるのではなく、これからは「見つけてもらいに行く時代」

こういう、できることの掛け合わせをしてるのは、「見つけてもらう工夫」の1つです。

いかに見つけてもらうかが、これからの時代を生き抜いていくために必要なスキルだと思っています。

――見つけてもらう工夫が、これからの時代を生き抜いていくスキル……

例えば、赤城乳業に勤めていた時、ガリガリ君リッチ コーンポタージュ事件っていうのがあったんですよ。

――コンポタージュ「事件」。(笑)

2012年にガリガリ君が、限定フレーバーでコーンポタージュ味を販売したんです。コーンポタージュをアイスに、っていう奇抜な発想で、SNSを中心に、いわゆるバズが起こりました。

――テレビでもニュースになっているのを見た気がします。

僕は直接的には開発に関わっていないのですが、コンポタを企画したのが僕の先輩だったので、そうした動きを間近で見ていて。広告業界じゃなくても商品開発で、同じように世の中に影響を与えられることが分かったんですね。

そうしたら今度は後輩が「ガリガリ君ナポリタン事件」を引き起こしました。

――ナポリタン「事件」。(笑)

開発中に味見させてもらったとき、「僕は鉄板の上で焼かれたナポリタンの味を出したいんです」って力強く語る後輩を見て、こいつはヤバイぞ、と震えましたね……。コーンポタージュは奇抜なのに成功して伝説になりましたが、ナポリタンも別の意味で社内の伝説になりました……3億円の大赤字で。

――(私はそのナポリタンが美味しくて、何度も買ってた、とは言いづらいな……)

味はともかく、ナポリタンも面白さがウケてSNSでバズりました。当時、ガリガリ君関係で、担当者もTVに出たりと、成功といえる結果にはなったと思います。

ただ、メーカーである赤城乳業は、“アイスを作る職人さん”たちなんです。

――職人さん、というと。

面白いものを作ることに情熱を注いでいるので、面白いものを作ったら、世の中が勝手に話題にしてくれるっていう感覚なんです。

コンポタもナポリタンも確かにバズったけど、もっと一般の人にあらゆる情報が届いていくだろうこれからの時代は、ただ面白いものを作るだけじゃダメなんですよ。

――今ふと思ったのですが、埋もれていく地方の伝統産業、ってまさにそんな感じですよね……

これ、株式会社コルクの佐渡島さんから教えてもらった受け売りなんですが、2000年と2020年では、情報量は6450倍違うらしいんです。

――6450倍!

もはや面白いものを作っても、見つけてもらえない時代。

世の中に才能は溢れているけど、見つけてもらう工夫がセットになってなきゃ、埋もれちゃう。

赤城乳業は、職人気質だから、そういう工夫はこれまであまりしていなくて。

――広告を勉強し、メーカー会社勤めされたホリプーさんならではの気づきですね…

だから、すごく危機感があったんです。大好きな赤城乳業がこれからの時代を生き残るために、何か手助けできないかな、と。

でもいきなり僕が言ったところで説得力は何にもないから、「見つけてもらい方」の実験をすることにしました。

実験を繰り返して生きていく

今でこそ僕はSNSで「ホリプー」として活動していますが、そもそもはアイスの仕事のための実験だったんですよ。

――ホリプーさんは実験体だった…!?
そう。本業はパッケージデザイナーだから、ネットにアップする絵って、趣味でありただの落書きみたいなものなわけです。でも見つけてもらい方を工夫すれば「ちゃんと価値になる」、その方法を探りたかった。

デザインしたアイス「Sof’」(赤城乳業)とイラスト:instagram.com/horipu_

会社の商品であるアイスは、美味しいし嫌いな人はいないと思う、「すでに魅力的で価値あるもの」ですよね。だから、必要である「見つけてもらう工夫」を会社に落とし込むために、自分のネタを振りまいてるんです。いろんなできることを掛け合わせ、どうやったら注目を集めたり影響を与えられるのかを実験しています。

――SNSマーケッターみたいですね。

そうですね。そうですね。自分のアカウント「ホリプー」で実験して、会社の仕事でのアカウントで実践しています。

――デザイナー兼イラストレーター兼漫画家兼SNSマーケッター…

もう自分でも何者かよくわからないです。

職業名に自分をおさめて考えない。嫌なことはやらないって決め、好きなことだけをやると、本当に色々な経験ができる。

でもその現状に満足してしまうと、喜びに鈍感になっていく可能性があります。

そこで「実験する」ことで、新しい気づきを発見して喜ぶように心がければ、人生は面白くなり続けると思います。

僕は自分の人生を、作り、試し続けて、発展を持続させる形にしたいんです。

――本当に、ホリプーさんは「自分を喜ばせること」に長けてますよね。

僕にとってやりたいことは「自分と人を幸せにする」こと。

自分が幸せじゃなかったら、意味がないんです。

ホリプーさん「上下線のふたり」18話より:instagram.com/horipu_

続けられるのは「こういうバイタリティがあるから」とか「モチベーションが高いから」ではありません。今までに言った、

・できることを自分の中から見つける
・好きになる理由を守る、習慣化する
・いろんな体験を集約して何か1つのものにする
・見つけてもらう工夫をする

これらをしていたから、今の僕があるんだと思います。

「もっと描いてみようかな……」
そう呟いて、私は清々しい気持ちで、
再びペンを握った。

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